HOME LIBRARY COLUMN SOMECITY 2013-2014 TOKYO 2nd FINAL コラム 「ヒーローになれなかった男」

SOMECITY 2013-2014 TOKYO 2nd FINAL コラム 「ヒーローになれなかった男」

またしても入場規制が発生し、過去最高の入場者数を記録したSOMECITY TOKYO。
初に断っておくが、残念ながらこの日、誰もが認めるような「ヒーロー」は現れなかった。

来季のSOMECITYレギュラーリーグ参戦権を賭けた入替戦・「SOMECITY CRASH」では、TEAM-Sの1年ぶりのレギュラーチーム復帰を、現レギュラーチーム最下位の420が阻んだ。
今シーズンの総決算「PLAYOFF TOURNAMENT」では、今季大躍進を遂げたSIMONが1st CHAMPION F’SQUADを破る番狂わせを演じ、そのSIMONを圧倒的な強さでねじ伏せた平塚Connectionsが2nd CHAMPION TEAMに輝いた。

本稿では、幾つかのドラマが用意されていたものの、
少々物足りなかった、勿体なかった一夜の様子と、
惜しくもヒーローになれなかった4人のボーラーについて語ることにする。


先ずは、裏メインイベント「入替戦」SOMECITY CRASHに触れておく。
レギュラーラウンド最終戦を初勝利で終えた420と、レギュラーラウンド最終戦で初敗北を喫したTEAM-S。少なからず勢いの差はあったにせよ、最終的には「絶対的スコアラー」の有無が勝敗を分けた気がしてならない。ずばり420の勝因は、ヒーロー不在にあった。司令塔#2 kyoshiを接触プレーで早々に失うと、普段はベンチからチームを支えるキャプテン#14 TAIKIがコートイン。不運なアクシデントに見舞われる中、ディフェンスとリバウンドで汗を流すコート上の誰より献身的な男が、チームを一つにする。ゴール下で華麗なステップを踏む#15 S-TAROにボールを集めると、「W長谷川」を欠く2ndシーズンで磨きあげた連携が輝きだす。この日が最後のSOMECITYだったフィニシャー・#23 SHUJIは、「延長に入っても負ける気はしなかった」という言葉の通り、ティップオフからタイムアップまで点を取り続けて、このゲーム最多の20得点を記録。誰よりもヒーローに憧れた男のラストダンスは、涙と笑顔で幕を閉じた。
対照的に敗れたTEAM-Sは、この日限りの引退が発表された#0 TAKUと心中する道を選択。スターターの平均年齢が35を超えるベテラン軍団は、序盤こそ2009シーズンMVPの右腕から放たれる正確無比なシュートでリードを奪ったが、時間の経過と共にその精度は下降の一途を辿った。それでも、「桜木花道みたい」とMC MAMUSHIに揶揄された途中投入・#77 スーパーマーシーが会場の空気を変え、レフェリーの偏ったジャッジに命を救われ、3点ビハインドの後半ラストプレーで巧妙にファールを誘い、TAKU自ら獲得した3本のフリースローを3本とも沈めて延長戦まで繋いだ、出来過ぎたストーリーライティングは鳥肌モノだった。残念ながらオーバータイムで力尽き、少年漫画のヒーローのようにラストゲームの花道を飾ることは出来なかったが、僕の脳裏に刻まれた精密なピック&ロールが色褪せることはない。創成期からシーンを牽引し続けた濱の44口径に、思いつく限り感謝の言葉を伝えたい。


ここからは本編・PLAYOFF TOURNAMENTの様子をお伝えする。
退屈なセミファイナルを、昨年の王者が16分間で終わらせた。
故障明けでエンジンのかかりきらない#9 CHIHIROの代わりにチームを勝利に導いたのは、インサイドでのリバウンド争いに身体を張り、アウトサイドから5本のダウンタウンをメイクした#6 TATSUHITO。来季のヒーロー誕生を予感させる大活躍で、平塚Connectionsが2年連続のTHE FINAL進出に王手をかけた。
一方、大舞台でボールが手に付かないUNDERDOGは、#78 NOBUCHIKAの連続ダウンタウン、驚異的な身体能力を見せた#17 TATSUROUのWクラッチで一時の見せ場は作ったが、デリケートなコールが続くレフェリーに詰め寄るばかり。勝負所の1本で精彩を欠き、闘う相手を間違えたままタイムアップの瞬間を迎えてしまった。


続くGAME2で、今シーズン最大のアップセットが発生した。
確かに敗れたF’SQUADは本調子ではなかったが、どちらかと言えば、勝利したSIMONが良すぎたのだろう。TOKYO1カタい鉄壁のディフェンスが、これまで相性が悪かった天敵の得点を一桁に抑え、#27 シバタを中心としたオフェンス陣の公開リンチが一方的に続く。前半終了時点のスコアは、「9‐25」。「Fが喰われるかもしれない…」予想外の展開に複雑な表情を浮かべていた場内が、にわかにザワつき始める。
転機が訪れたのは、アドバンテージルール。ベンチで指揮を執る#22 TANAに「責任を取って来い」と送りだされたキャプテン・#7 K-TAが1on1に登場すると、待ち焦がれていたオーディエンスをシグネチャームーヴのクロスオーバーで沸かせ、ここまでシャットアウトされていた#29 カワテからAND1を奪ってON FIRE!ようやく覚醒した寝ぼけ眼の英雄は、後半に入って5本の3ptシュートをねじ込み、最大16点差のワンサイドゲームを振り出しに戻すことに成功した。しかし、彼がこの日のヒーローになることはなかった。
命からがら辿りついた揉みくちゃのオーバータイムで彼等を待ち受けていたのは、このゲーム通算4本目となる#31 ナルセのダウンタウン。結局これがウイニングショットになり、1stに続く2nd連覇・シーズン完全優勝の夢が潰えた。


最終的には綺麗な、良く出来たシナリオだったと思う。
ダークホースとしてリーグ戦で快進撃を続け、気が付けばF’SQUADを飲み込むほどのラスボスにまで成長したSIMONを、2年連続「THE FINAL」行きを目指す今季の主人公・平塚Connectionsが撃破した。
僅か10分のインターバルでTOKYO最強の攻撃力を持つ王者に挑み、一歩も引かない互角の斬り合いを演じたSIMONの実力は、あの日会場に居合わせた誰もが認める本物だ。今季の最終戦では、Wスコアラー#27 シバタと#14 オイカワ、外もある#31 ナルセと#29 カワテa.k.a.FIREMANのWディフェンダーに加えて、「良いバッシュ履いてるね~」MAMUSHIに弄られたグッドシューター・#15 ツカサが爆発。効果的なメンバーチェンジを仕掛ける総帥・ミウラの見事なベンチワークも手伝って、昨年の王者をおおいに苦しめた。
それでも、2012-2013シーズンのCHAMPION TEAMは揺るがなかった。今季の彼等は、際どいジャッジを巡ってレフェリーに食ってかかることも少なければ、ファールの数もダントツで少なかった(これは、オーナー兼ヘッドコーチのAT氏がチームで最も血気盛んであることも関係しているかもしれないが…)。ただ目の前の相手を抜き去り、リングにアタックする。相手マークを外して、シュートを放つ。実にシンプルなファイトスタイルだ。2013-2014シーズンMVPに選出された#9 CHIHIROの「余裕はない。常に挑戦者の気持ちでぶつかっていく。」という王者らしからぬコメントが語る通り、どのチームよりも真摯にストリートボールと向き合った結果が、彼等を2年連続の「THE FINAL」へ導いたのだと思う。徐々にエゴを取り戻し始めた#2 SHIGEOが遠慮なしにアウトサイドからシュートを放り込むと、昨季には存在しなかった#5 TATSUHITOのインサイドアタックが一進一退の試合を動かした。心強い味方に支えられながら、居合抜きのようなCHIHIROのドライブが段々と研ぎ澄まされていく。1点ビハインドの場面で登場したアドバンテージルールでは、名手カワテを完全に抜き去ることは出来なかったが、右手一本で放り投げる高難度のシュートを成功させて何とか面目を躍如。その後も躊躇することなくリングへ向かっていき、終わってみればSHIGEOと並んでゲームハイの16ptをマークして、しっかりと優勝に貢献した。試合後のインタビューでは、「今日は本当にチームメイトに助けられた」と自身のパフォーマンスに満足していない旨を漏らしていたが、同様にオーディエンスも今日のCHIHIROの出来には決して満足していない。「SAMURAI SWORD」と形容されるTOKYO No.1スラッシャーの切れ味は、まだまだこんなモンじゃない。


こうして、ヒーロー不在のまま、SOMECITY 2013-2014 TOKYO 2ndが幕を閉じた。
何処かモヤモヤした気分のまま消化不良に終わったオーディエンスの皆様、ご安心ください。
「彼」は必ずや怪我を治し、コンディションを向上させ、シーズン最後の大舞台でヒーローになる準備を整えてくるでしょう。どうかその瞬間を、ヒーローが誕生する瞬間を心待ちにしていてください。

文:石井ジョゼ