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SOMECITY 2014-2015 TOKYO 1st 開幕戦 コラム 「リセットボタン」

新しいレギュレーションを引き連れて、新しい季節がやって来た。
昨シーズンまで6チームだったレギュラーチームは、2チームを加えた計8チームに増加。
昨シーズンまで16秒だったシュートクロックは、2秒加えた18秒へ変更。
そして、この日ボーラーズの頭を何度も抱えさせた、NBAでも採用されている「ディフェンス3秒ルール」の採用。
詳しくはSOMECITY OFFCIAL WEBSITEと会場で無料配布されたムック「SOMECITY SOUL」を確認してほしいのだが、今年で7年目を迎える僕達のパーティーは、これまでの6年を踏襲しながらも独自の路線を模索するガラパゴス的な進化を遂げようとしている。
オリンピック正式種目を目指す3×3「「バスケットボール」が巷で盛り上がりを見せる中、「ストリートボール」リーグ・SOMECITYは、もう一度リーグ発足当初の原点に戻ることにした。
「ストリートボールとは、バスケットボールを使った究極の遊び」であると、オーガナイザーを務めるTANAは言った。これから始まるのは、そんな究極の遊び場を提供するバスケットボール狂いによる、ドープでハングリーな1年に及ぶ痛快な物語である。
少々前置きが長くなったが、それでは、この日行われた開幕戦の様子を、順を追って振り返ることにしよう。


先ずは、残り1枠のレギュラーチーム参戦権を賭けて行われた「WHO'S GOT GAME? FINAL」の結果から。
結論から先に述べると、今季から廃止された下部リーグSCDLに在籍していた多国籍軍団・SUNDAY CREWが、イエローコート初登場のKIDROCを36 – 31で下し、悲願の昇格を果たした。
この「キッドロック」という響きを初めて耳にする方も多いはず。何しろ僕も初見のチームだったのだ。「WHO’S GOT GAME? 1st」こそSUNDAY CREWに遅れを取ったものの、「WHO’S GOT GAME? 2nd」で人気チーム・TOKYO BEASTを破って聖地クラブチッタまで辿りついたニューカマーのフロントマンを務めるのは、昨シーズンまでSIMONに在籍していた#44 NARUSE。古巣に留まれば無条件でが立つことの出来る表舞台へはあと一歩届かなかったが、#409 シュレックを片手一本で抑え込んだという#09、大一番を怪我のため欠場したエース・MASUKOら頼もしい仲間を引き連れて、もう一度0からイエローコートを目指すという。コートの内外で色々な意見が飛び交っているとは思うが、個人的には彼の勇気あるリセットを尊重したい。一週間後には、来シーズンのSOMECITY参戦権を賭けた「WHO’S GOT GAME?#1」が開催される。今シーズンから結成された彼等の物語は、まだ始まってもいない。たった一度きりの挑戦にならないことを心の底から願う。


昨シーズンの「入替戦」SOMECITY CRASHで帯びていたビリビリの緊張感は何処へやら。
新しい季節の記念すべきGAME1は、最前列に座る観客が携帯電話をいじるのも無理はない、それはそれは退屈な内容だった。
チームエクスパンションに伴う1年ぶりのレギュラーチーム復帰を果たしたTEAM-Sだったが、ハッキリ言って、この日の彼等は良い所なし。今季から加入した新戦力も今季から戻って来た懐かしい顔ぶれも、まるで良い所なし。
もし貴方がリモコンを持っていれば、見かねた#10 MR.ANがタイムアウトを要求する後半残り3分55秒まで早送りしても全く問題ないだろう。
そんな「フリースローばっかり!」とMC MOJAも呆れるロースコアの試合を、かろうじてGAMEとして成立させていたのが、420が擁する1stシーズンだけの秘密兵器「W長谷川」だった。
もし、#32 HASEの柔らかなパスを受け取った#24 SHOWがドライブからワンハンドダンクを叩き込むスーパープレーが描かれなかったら、それまで溜まりに溜まった場内のフラストレーションをハイライトシーンに昇華させてくれなかったら、と想像しただけでも恐ろしい。最後は、SHOWのノールックパスを受けたHASEが195cm ・117kgの巨体を宙に浮かせて、AND1をもぎ取るWクラッチ!昨シーズン僅か1勝に終わった420が、29-41で開幕戦勝利を飾った。


惜しくも開幕戦MIP(Most Impressive Player=最も印象に残った選手)を逃したものの、もしSOMECITY TOKYOに開幕戦MVP(Most Valuable Player=最も価値のある選手)が存在するなら、満場一致で彼の名前が挙がったはず。
UNDERDOGが36-49で勝利したGAME2は、#33 M21の独壇場だった。
昨年のRed Bull King of the Rockを制した得意の3ptシュートに加え、「3×3日本代表候補強化合宿で絞り込まれた」というキレのあるスピンでゴール下を次々と沈め、チーム最多の21ptをマークした。ノータイトルで終わった2013-2014シーズンを振り返り、「もう一度プレー面でも先頭に立って」と鬼気迫る表情で仲間を牽引する姿に飲みこまれた人も多かったのではないだろうか。
また、そのM21を以て「アイツの存在が大きかった」と言わしめる#91 WORMの復帰も見逃せない。純正ポイントガードの居ない攻撃的なロスターにおいて、「(WORMは)ボールを落ち着かせられる、キープ出来るので、それで自分も自由に出来たのかな」と、親分も絶対の信頼を寄せる。黄金時代を築いた中心選手が帰って来た今季のUNDERDOG、開幕戦を見る限り優勝候補最右翼であることはどうやら間違いなさそうだ。
一方、昨シーズン大躍進を遂げたSIMONは、ナルセの移籍に加え、#14 オイカワが怪我で欠場する苦しい台所事情。中心選手が不在の中、エース#27 シバタが一人25ptを荒稼ぎしたが、正直言って戦力ダウンした感は否めない。抜けた中心選手の穴を埋める新戦力の台頭が早急に望まれる。


スタイルこそ違えど、両者の持ち味が十二分に凝縮された16分間だった。
MOJA曰く、「若くてカッコ良いF’SQUADと、オジさんで面白い勉族」によるGAME3が、開幕戦のBEST GAME。
両手でピースサインを作る「カニさんディフェンス」を繰り出した「実は俺、甲殻類アレルギーだから!」と語る#1 ぬまが#10 ABに吹っ飛ばされたシーンは開幕戦の裏ハイライト間違いなし。随所に笑いを散りばめ、観客を味方に付けながら、しれっと勝利へのシナリオを書きあげていく試合巧者・勉族だったが、Fのルーキー・#14 DAIKIの勢いがそれを上回った。
bjリーグでのプレー経験を持つ若干23歳のニューフェイスは、初めてのSOMECITYを物怖じすることなく楽しむように、自慢の力強いドライブをアグレッシブに仕掛けていく。一番の見せ場であるアドバンテージルールで大好物の1on1を成功させると、時間の経過と共に本性を現し始め、遂には勝敗を決するウイニングショットまで決めて、この日も存分に目で楽しませてくれたチームメイト・#23 LAWRENCE以来となる初登場MIPを獲得。「Fの主力が怪我人だらけだったので、自分が力になれればなって思ってました。」という優等生なコメントとは正反対の、良い意味でセルフィッシュな、ガンガン仕掛けるプレースタイルで鮮烈なデビュー戦を飾った。
昨シーズン終盤に骨折した右手人差指の影響でDNPだった#7 K-TA、ゲーム中の接触プレーで途中退場した#18 MATSU(後に左腕を骨折していたことが判明)を欠く主役争いに、また一人新たな逸材が加わったF’SQUADが、26-30で開幕戦白星を挙げている。

とはいえ、勉族のルーキーもまた素晴らしかった。
#14 「バンカー(=ぬま曰く、ダンクの出来る銀行員の意らしい)」というユニークなボーラーネームを引っ提げて登場したのは、昨季行われたスピンオフイベント・NIGHT COLLEGEで大学選抜チーム「ALL COLLEGE」の一員としてイエローコートで猛威を奮った森山翔太。残念ながらこの日は満足のいくプレーが残せなかったが、「有名な選手がいっぱいいるので、その一人になりたい。」と本人が語る通り、近い将来必ずやウォーミングアップで見せるような豪快なダンクを成功させてくれるだろう。
そのバンカー同様スタメンに抜擢された#88 イケは、「5on5の公式戦でUNDERDOGから40点を奪った」という自慢の1on1スキルを如何なく発揮して、チームトップの9ptを記録。「楽しかったです。この舞台に立てたのも、ぬまさんと出会って、誘ってくれたからなので。プレーで恩返しがしたいです。」と力強いコメントを残してくれた。どうやら、今季はルーキーが豊作の予感。次節以降も現れるであろう新ヒーロー候補が、今から楽しみで仕方ない。


この日のラストゲーム・MAIN GAMEでアップセットが発生。
現在SOMECITY THE FINALを2連覇中の平塚Connectionsが、前座試合で「WHO’S GOT GAME?FINAL」でレギュラーチームに昇格したばかりのSUNDAY CREWに、31-28で敗れる大波乱が起きたのだ。
前半こそ、不動のスターター「平塚三銃士」でリードを奪い、#12 KENら新戦力を試す余裕を見せていたディフェンディングチャンピオンだったが、後半に入ってジワジワと効いてきた多国籍軍団の高さを前に、戦況が一変。185cmの#50 KYLEがアタックを仕掛け、194cmの#55 LEEがゴール下で暴れ回る。怒涛の4連続得点を許し、一転ビハインドを負った平塚Connectionsの歯車が、最後まで噛み合うことはなかった。#2 SHIGEOが3ptシュート4本含む18ptをマークしたが、#9 CHIHIROは僅か7pt、#5 TATSUHITOに至っては無得点のままタイムアップの瞬間を迎えてしまった。彼等に何が起こっていたのかは分からない。ただ僕は、眼前に広がる光景に茫然としていたのだ。


かくして、リセットボタンは押された。
「これだから新シーズンは止められない―」というMAIN GAME終了直後のMC MAMUSHIの台詞に、ドキドキとワクワクが止まらなかった。
昨シーズンまでの成績も相性も関係ない、ただ強い者が勝つシンプルで新しい物語が、
ただ自分のやりたいことだけを追求する、バスケットボール究極の遊び場を舞台に、いま再び始まったのだ。

文:石井ジョゼ