
SOMECITY CRASH【BEST GAME!!】
TEAM-S × 31 - 35 ○ 勉族
顔を観る限りでは、どちらが勝者で、どちらが敗者か判別するのは難しかっただろう。
来季のレギュラーチーム参戦権を賭けた「SOMECITY CRASH」は、1mmの遺恨も残さない、入替戦とは思えぬ爽やかな幕切れが用意されていた。
下部リーグSCDLを制した昨シーズンまでのレギュラーチームTEAM-Sは、これまでリーグ戦に一切出場しなかった「ANちゃん」#10 ANが、まさかのスターターでイエローコートに初見参。
総大将の登場で一気に士気を上げると、驚異の集中力を見せた「濱の44口径」#44 TAKUがシュートを決め続けて猛追を見せたが、1シーズンでのカムバックは叶わなかった。
即ち、16分間を通してゲームは勉族ペースで進んだ。
会場の何処からともなく発生した、勉族サポーターによる15秒ショットクロック・カウントダウンの大合唱は、シーンが彼等の勝利を望んでいるような気さえした。
196cmのサイズを活かしてオフェンスリバウンドをもぎ取り続けた「大魔神」#96 ダークロとのピックアンドロールから、ギリギリまで時間をかけてボールを回し、手薄になったアウトサイドから「本気モードの道化師」#1 ぬまがアウトサイドシュートを決める。
3FOULながら最後までコートに立ち続け、ウイニングショットの難しいレイアップを決めた「代エース」#33 てるもチームの残留に必要不可欠なピースだった。
苦しみもがきながら1シーズンを戦い抜いた「柏のエンターテイナー」は、強かった。
タイムアップを告げるブザーが場内に鳴り響き、拍手と歓声がイエローコートを薄い膜のように包み込む。
全てを出しきった両者が、笑顔でハンドシェイクを交わしている。
それは、彼等だけにしか分からない、違う誰かが決して足を踏み入れてはいけない、ある種の聖域のようだった。
PLAYOFF TOURNAMENT GAME1
SIMON × 36 – 43 ○ UNDERDOG
PLAYOFF4位通過のSIMONが、同1位通過のUNDERDOGをおおいに苦しめた。
4FOULでコートを去る残り2分まで「NBLリーガー」#6 アチャがゴール下を守り抜き、「辻斬りボーラー」#27 シバタと「QUICK&HARD」#31 ナルセが外から射抜いて、終盤まで互角以上の闘いを見せる。
僅かでもアップセットの可能性を漂わせた彼等には敬意を表したい。
しかし、このゲームの主役は、この夏、この国のストリートボールシーンを総なめにしているUNDERDOGだった。
後半開始直後の連続ダウンタウンで試合をひっくり返した「Red Bull King of the Rock日本代表」#33 M21は流石の二文字に尽きるし、このゲームで2度しかないブザービーターのチャンスを、2度の3ptシュートでモノにした伊達男・「左利きのロッドマン」#91 WORMのストーリーライティングは、MCを務めたMAMUSHIも「いよいよ無双に突入したか」と漏らさずにはいられない仕上がり。
序盤の劣勢すら演出に変えてしまう最強の負け犬が、1年ぶりのリーグ優勝に王手をかけた。
【PLAYOFF TOURNAMENT GAME2】
F'SQUAD 43 ○ - × 32 平塚Connections
初代王者の勢いが、昨年の王者を上回ったか。
一方的な革命の中心には、Fの意思を継ぐ二つの武器があった。
何度もブロックショットを浴びせた「リズムを刻むファンタジスタ」#18 MATSUが盾となり、破壊力に勝る平塚オフェンス陣を30点台前半に抑えると、ストリートボール世界大会QUAI54で3pt CHAMPIONに輝いた「Mr.CROSOVER」#7 K-TAは、珍しくポストプレーを見せたかと思えば、3ptラインの外から4本の剣を直径45cmの輪に突き刺して数字を積み上げた。
「ドライブイン馬鹿」#9 CHIHIROが大好物の1on1で、2節連続でMIPを獲得した「ナスティー・シューター」#2 SHIGEOが得意の3ptシュートで反撃の狼煙を上げたディフェンディングチャンピオン・平塚Connectionsだったが、気付けば試合は終盤へ。
スコアボードには、絶望的な点数が刻まれていた。
CHAMPIONSHIP GAME
UNDERDOG × 31 - 36 ○ F'SQUAD
先ず初めに、規定出場試合数の関係で、今シーズン最後の大一番を僅か4人で戦い抜いたUNDERDOGに称賛を送りたい。
故障明けの万全とは言えないコンディションながら、要所で3ptシュートを沈めた途中出場の「ダイナマイト・シューター」#28 NOBCHIKA。
大事な場面でボールを託され、そしてシュートを決め続けた「左利きのロッドマン」#91 WORM。
今シーズン、ゴール下で大ブレイクを果たした「ドッグイヤー」#17 TATSUROU。
そして、3匹の狂犬を統べるオールラウンドプレーヤー・「Red Bull King of the Rock日本代表」#33 M21の計4名に、PCのモニター越しに拍手を送って頂きたい。
さて、彼等の歴史は、SOMECITYと共にあった。
開幕から5年、初優勝から4年半、SCDL降格から2年。
出会いと別れと成長を繰り返して、頂点と底を知りながら、彼等は前へと歩みを進めた。
僕を含め、戦前はUNDERDOGが優勢だと予想する人も多かったはずだ。
そして、それは決して間違いではないはずだった。
きっと彼等は、ゲーム中に進化を遂げていったのだと思う。
何のことはない、絶対的に有利だと思われたUNDERDOGの実力を、F’SQUADの進化する速度が上回っただけの話だ。
初代王者F'SQUADのリーグ戦初制覇は、シーンの情勢が元に戻ったのではなく、このシーンが、リアルタイムに変化し続けていることを意味している。
このSTAGEに立つ人間に対して、常に進化を要求しているのだと感じた。
色々と感じることはあるが、とりあえずこのゲームに関して言えば、文句なしのMVPに輝いた「Mr.SOMECITY」 #7 K-TAが沈めた7本のダウンタウンに尽きる。
「俺らがTOKYO No.1だ!!!」
2013年8月7日、この国のストリートボール史に、また新たな1ページが刻まれた。